印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2014年1月20日月曜日

印刷機材のマーケティング寿命にどう対応してますか?

拙訳書「未来を破壊する」の中で、ジョー・ウェブ博士は印刷機材の『マーケティング寿命』という考え方を提示しています。この言葉は、その印刷機材が「どの程度の期間、市場のニーズを満たすものを生産できるか」を表しています。これに対して、印刷機材の『機械寿命』は、物理的にどの程度使えるかという期間を表します。ウェブ博士は、機械寿命よりもマーケティング寿命が短いことも、あわせて指摘しています。

「未来を破壊する」について多くの方々からご意見・ご感想をいただいていますが、その中でもマーケティング寿命への反応が比較的多いように感じています。特に、戦略重視型の印刷会社の方からこの言葉に共感いただいているのが、とても面白く感じています。

また、国内外の印刷会社を問わず、このマーケティング寿命を意識した印刷設備導入・活用戦略を進めているところが多いことも見えてきました。例えば、35年で投資を回収し、常に最新の印刷機材を活用することで競争力を高める戦略を採用している印刷会社も少なくありません。この中には、こちらの記事(精工はHP Indigo 20000をどのように活用するのか?)でご紹介した精工や、最新機種で効率性を高め続けているタイプの印刷通販会社などが含まれます。

これに対して、どんどん機材を改良(というか改造)することで、マーケティング寿命を延ばすという戦略の印刷会社もあります。PRINT13の際に工場見学をさせていただいた米国のDM印刷会社SG360社、国内ではフォーム印刷会社である内外カーボンインキの関東久喜工場(埼玉・久喜市)などがその例です。

印刷(プレス)の前後の工程(プリプレス・ポストプレス・フルフィルメント)を含めた仕組み全体をシステム化し、それを進化させることで市場が求めるサービスを提供することを目指す印刷会社もあります。このケースは、印刷通販やWeb to Printサービス、デジタル印刷サービスなど、小ロット・多品種の仕事が多い印刷会社に多くみられます。

機材の購入方法という点でも、マーケティング寿命を意識したものが取り入れられています。米国の印刷会社の中には、印刷機材を定価(あるいはそれに近い)価格で購入する代わりに、「いついつまでに仕事が立ち上がらなかったら返品する」という条件をつけるところもあるそうです。

このように、印刷会社の間では、機材のマーケティング寿命を意識した導入・運用戦略の実践が広まりつつあります。では、印刷機材メーカーの側ではいかがでしょう?最近、連続紙用インクジェット機の分野では、色数や生産性を変更できるオプションがついている機種も増えてきています。ただ、短いマーケティング寿命の間に大きく稼いだり、マーケティング寿命を延ばしたりすのに必要な要素は、色数や生産性だけとは限りません。2014年は、印刷会社が求めるようなマーケティング寿命に対応した機材を開発・提供できる仕組みを、印刷機材メーカーにぜひとも構築していただきたいと思います。