印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2013年12月26日木曜日

精工はHP Indigo 20000をどのように活用するのか?

先日、株式会社精工(本社:大阪市北区)のつくば工場にお伺いしました。精工は、創業明治44年、従業員数539名(平成253月現在)・年商92.8億円(平成24年度実績)の軟包装コンバーター(印刷・加工会社)です。

精工は、drupa2012HP社のB2幅連帳式デジタル印刷機Indigo 20000のアジア1号機を導入する(しかも3台同時に!)ことを発表し大きな注目を集めました。今回お伺いしたのは、精工のデジタル印刷戦略についてお教えいただくためでしたが、その前段のはずの事業戦略についてのお話しが面白過ぎて本題には入れませんでした (^ ^; 

実際、Indigo 20000の納期は、12月上旬時点でまだ決まっていないとのことでした。精工ではIndigo 20000をサンプルや校正ではなく商品の生産に使うことを考えていることから、納期が確定しないことには使い方の詳細を詰めることができないようです。これは逆にいうと、使い方についてのアイデアを既に持っているということです。どのような使い方をされるのか、また実機が導入された時点でぜひお伺いしたいと思います。

皆さまにもIndigo 20000を活用したサービスが開始された際に存分にその迫力を味わっていただくため、今回は精工のサービスの特徴を簡単にご説明したいと思います。

精工の大きな特徴として、「商社マインドを持ったコンバーター」という点が挙げられます。これは、第二次世界大戦後(第一次世界大戦前に創業されていますので)の一時期、商社としての活動をしていたことが背景にありそうです。

こうした特徴は、「顧客と商材が多様」といったサービス内容にも表れています(下図参照のこと)。精工は、コンバーターとして印刷・加工サービスを提供していることに加え、独自のルートを通じて世界各国で見つけた印刷・加工用の機材・資材を輸入・販売もしています。その販売先も、青果(特に野菜・果物)の生産者や同業者(コンバーター)、小売業者と非常に幅広くなっています。

小売業者に対してはさらに、店頭での販売を伸ばすアイデアや什器・小物などもあわせて提供しています。また、食品メーカーに対しては、商品開発(例えば、観光名所向けオリジナルパッケージの開発)の支援も行っています。青果の生産者向けに機材・資材を提供しているのは、農業の6次産業化のニーズが高まっているためです。こうした柔軟性の高いスタンスでの取組みは、商社としての経験が活かされたものだと思われます。

今回の取材では林正規取締役にお話しをお伺いしたのですが、林氏の経営スタイルからも「商社マインドを持ったコンバーター」という特徴が伺えます。例えば、「この機械を使ったらどんなことができるのか」という設備発想ではなく、「こんなサービスを提供したいんだけど、それが実現できる機材・資材はないかな」というマーケット発想をされています。

また、「設備投資は5年以内に回収し、どんどん新しい設備を導入する」というお考えだったりもします。これは、拙訳書「未来を破壊する」でも指摘されている「設備のマーケティング寿命は、機械寿命よりも短い」という発想です。新しい設備を導入することは、サービスの品質や競争力向上を実現することにもつながっています。

独自ルートを通じて世界各国で印刷・加工機材や資材をさがすことは、「投資を5年以内に回収・次の設備を導入」というサイクルを回すことにおいても重要な役割を果たしています。設備投資サイクル短縮のためには、安くて新機能を持った機材を見つけることが必要不可欠なためです。

精工の工場には「日本1号機」という機材がゴロゴロしているのですが、これはサービスのアイデアを持って世界各地で最新・安価なものを探している成果なのです。HP Indigo 20000も同じ考え方で導入を決めたそうで、他の機材と同じく「5年での回収」を本気でお考えです。

精工のユニークなところは、最新鋭で安価な機材を持ち、やはり安価な資材を使っていることから非常にコスト競争力が高いにも関わらず、過剰な価格競争はしないというスタンスを保っているところです。実際、入札案件で他社が安く落札する仕事も少なくないそうです。

これは、提案力や情報力なども含めた「課題解決力」に自信があるからだと思います。確かに、いろいろな人やものを繋いだり小売業者に対して販売支援まで行ったりといった商社マインドを持った競争相手は限られています。幅広い視野で市場を見ている(あるいは、競合とは異なった視点から市場を見ている)精工は、印刷・加工部分以外での事業機会も把握し、それらも合わせて実現することで売上・利益を伸ばす方向性を進んでいます。

他にもM&Aや取引先との信頼性向上、知恵と工夫によるコスト削減など興味深い取組みが多々あるのですが、すっかり長くなってしまったのでこれらの紹介は割愛させていただきます。申し訳ありません・・・ただ、本稿を通じて、精工が非常に面白い形でHP Indigo 20000を活用できる可能性が高いコンバーターであることは、ご理解いただけたかと思います。導入後のレポートも楽しみにお待ちください♪

また、今回ご説明できなかったポイントにもご興味のある方あるいは本稿についてご質問などのある方は、お気軽にお問い合わせください (^ ^)

【追伸:精工のデジタル印刷経験について】
今回の記事では、精工のこれまでのデジタル印刷の取組みについて触れるのを忘れてしまいました。申し訳ありません・・・次回の記事で精工のデジタル印刷経験値についてご紹介しましたので、こちらもあわせてお読みください。