印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2016年12月30日金曜日

スマート工場はdrupa2020でどう進化するのか?

drupa2016では、データをもとに自分で考える「スマート工場」も話題のひとつでした。自動化・省力化・スキルレス化が進んだ機材を組み合わせて各生産工程を最大限効率化し、さらにクラウドのデータをもとに工場全体の最適化を行う。そんな「夢の工場」がさまざまなブースで紹介されていました。

では、次回drupa(2020年開催)では、このスマート工場はどのように進化するのでしょうか。もちろん、さらなる生産工程の効率化は進むでしょう。ただ、それ以上の進化も十分に期待できます。

例えば、『紙媒体の適切な使い方を提案できる工場』への進化。印刷会社内には、クリエイティブや使用した用紙、コストなど、すでに生産した印刷物に関するさまざまなデータが蓄積されています。これらに顧客が持つ印刷物を活用したキャンペーンの成果など効果に関するデータを組み合わせることで、紙媒体の適切な使い方を予測・提案できるさらにスマートな工場に進化させることができます。この工場では、2016年のキーワードのひとつであるAI(人工知能)がフル活用されるでしょう。

あるいは、『職人と AI がお互いに刺激しあう工場』への進化。私は、AIは必ずしも職人を置き換えるものではないと考えています。むしろ、職人に刺激を与え、その技にさらに磨きをかけるための弟子のような役割を果たすことを期待しています。同時に、AIにとっても職人は精度を高めるための師匠となるでしょう。drupaでは、そんなスターウォーズのような(笑)職人とAIがお互いに刺激しあうスマートな工場の提案があるかもしれません。

『他社事例から学習できる工場』への進化も十分に考えられます。工場をさらにスマートにする方法のひとつに、他の印刷・加工会社のデータを活用することがあります。学習用データは多ければ多いほど、その効果は高くなりますから。また、他社データを活用することで、例えば自社設備の稼働ランキングもわかるようになるといったメリットもあります。ただ、お互いの工場訪問や協業に熱心な印刷業界ですから、もしかしたら、こうした他社事例から学習できるスマートな工場はdrupa前に登場するかもしれません。

他にも自社の『営業戦略を提案できる工場』『設備投資計画をアドバイスできる工場』『物流を最適化できる工場』『適切なセキュリティレベルを管理できる工場』など、さらなるスマート化の方向性としてさまざまなものが考えられます。drupaでは、どんな方向性への進化が提案されるのでしょう?今からとても楽しみです (^ ^)

2016年12月28日水曜日

B0/ VLF枚葉インクジェット機はdrupa2020に出展されるか?

印刷業界の2016年を振り返る時、ドイツ・デュッセルドルフで開催された世界最大の国際印刷機材展 drupa2016に触れない訳にはいきません。とはいえ、drupa2016の内容を改めて紹介するのもナンですので、世界で1番早く次回drupaを予測するブライター・レイターらしく(笑)drupa2016を踏まえつつdrupa2020のトレンドを予測します。

さて、drupa2016の華はB1サイズ枚葉インクジェット式デジタル印刷機でした。Landa社と小森コーポレーション、富士フイルムとハイデルベルグ、ゼロックスとKBAといった、デジタル印刷機・オフセット印刷機のメーカーがそれぞれの強みを持ち寄って共同開発した機種は、非常に高い生産性・印刷品質・用紙対応性などを実現し、オフセット印刷機の一部の仕事を置き換えることも視野に入れています。

drupaの歴史を振り返ると、drupa2008・drupa2012ではB2枚葉インクジェット機が大きな話題でした。そして、drupa2016ではB1枚葉インクジェット機が注目の的でした。では、次回drupa2020(2020年開催)では B0(B倍)やVLF(Very Large Format)の枚葉インクジェット機が出展され、同じように大きな話題になるのでしょうか?

私は、十分に可能性はあると考えています。ただ、それは以下のような特徴を備えた印刷会社をターゲットにしたかなり尖った機種になりそうです:

  • 『B1枚葉インクジェット機 x スマート工場』という仕組みを武器に、小ロット/マスカスタマイゼーション(一品大量生産)向け紙器パッケージ印刷の仕事を十分に開拓できている(あるいは、開拓の目処がついている)印刷会社
  • ギャンギング(複数ジョブの多面つけ)のノウハウも武器である印刷会社
  • 自社が必要なスペックを機材メーカーに示すことができる印刷会社、など

こんなに尖った機種だと「drupa会場で紹介しなくても良いのでは」という声も出てきそうです。しかし、私はこういう尖った機種こそ、drupa会場に展示すべきだと考えます。印刷業界の可能性や気概を業界の内外に示すことができるからです。

この年末年始は、drupa2016を振り返りつつdrupa2020の動向を予測する記事を上げていく予定です。大掃除やおせちに飽きたら、ぜひこのブログを覗いてみてください(笑)!
(写真は drupa2016会場に展示されたB0枚葉UVオフセット機 KBA Rapida 145

2016年12月14日水曜日

フロア広告で足元も華やかに♪

先日(10月ごろだったかと思います)、秋競馬広告仕様の京王線に乗ったところ、床に芝生が印刷されたフィルムが貼られているのを見てびっくりしました。最近、車体にフィルムが貼られたラッピング車両は頻繁に見かけるようになりましたが、床面まで装飾されている電車は初めて体験したような気がします。

そういえば、昨年のJAA広告賞特別賞は、アサヒビールが東京メトロ上野駅を桜尽くしにしたキャンペーンでした。これは、壁や柱はもちろん、天井や床、階段まで桜・桜・桜で埋め尽くされたとても華やかなものでした。

調べてみると、広告代理店の中には『フロア広告』というメニューを提供しているところも少なくありません。言ってみれば、秋競馬広告@京王線やアサヒビールのキャンペーン@東京メトロ上野駅は、このフロア広告を他広告メニューと組み合わせたものです。しかし、企画力でインパクトの大きなものとなっています。

ところで、最近FloorPosterというアイテムが日本でも紹介されるようになりました。これは簡単に言えば、印刷物を挟み込めるフロアマットです。これ単体でもとても面白い広告媒体ですが、ポスターや棚のPOP、シェルフレディパッケージ(SRP)、デジタルサイネージなどと組み合わせることで、例えば店頭ディスプレイのインパクトをさらに高めることができます。

あるいは、画像認識やAR(拡張現実)、デジタル印刷のような技術をFloorPosterと組み合わせることで、お客さまに新しい体験を提供することもできます。例えば、乗ると「奇跡の一枚」が撮れるフロアマットとか、その写真が印刷されたスマホケースなど「奇跡のグッズ」の提供とか、面白そうです。

フロア広告を絡めることで、リアルならではの立体的で効果的で話題性のあるマーケティング活動・販促活動を行いたい広告主の皆さま、あるいは店舗の魅力を高めたい小売店の皆さま、お気軽にお声がけください!

2016年12月12日月曜日

2016年の印刷市場を振り返る:福島県の場合

東日本大震災から5年が経ちました。節目の年ということで、マスコミでも被災地の現状を伝える番組や記事も多かったように思います。皆さんの中にも、さまざまな形で復興に力添えをされた方も多かったと思います。私も復興のお手伝いができればと、この秋はスポンサーという形でWeb広告研究会 東北セミボラ(セミナー&ボランティア)に参加しました。

印刷業界では全日本印刷文化典ふくしま大会10月21日・22日)が開催され、東北地方に注目が集まりました。今回は、福島県中小企業団体中央会が発表する中小企業景況レポートから、福島県の「紙器(紙製パッケージなど)・段ボール箱」と「印刷」の2つの市場概況を振り返ります(9月まで):


  • 2016年1月:

    • 紙器・段ボール箱:堅調感は残念ながら実感できてないのが現状といえる。多品種・小ロット受注でも売上高は何とか維持できたとしても、利益率は下方傾向にあることは否めない。 
    • 印刷:業況が部分的に好転、悪化と入り混じり、見通しは不透明である。また、従来の予測が成り立たなくなっている。
  • 2016年2月:
    •  紙器・段ボール箱:紙器業界も例年になく、厳しい経営状況である。今まで消 費税が上がるたびに、増税後は製品が売れなくなる。まして今度は税率が10%になるので、消費者の財布の紐は固くなるのではと思う。今年は我慢の年。業界全体で結束して頑張っていきたい。 
    • 印刷:例年、3月の年度末に向けた動きが出てくる月だが、大きな動きは感じられない。年度末に期待したいところである。 
  • 2016年3月:
    • 印刷:年度末のかき入れ時としては、業況がまだら模様で年度末の力強さが感じられなかった。
  • 2016年4月:
    • 紙器・段ボール箱:県内紙器段ボール箱業界は、大手工業製品や農産物をはじめ、あらゆる分野において多様な形で使用されている。商品保護はもちろん、機動性等、その役割の重要性は益々高まり私たちの生活の一端として欠かせない存在となっている。我々紙器を取り巻く経営環境は構造的な変化が進んでおり、新たな時代に即応した業界体制を構築すること必要となっている。
    • 印刷:新年度に入り、業界的にも大きな変化は見当たらず、各社とも地道な営業活動で新年度の予算取りに奔走している。 
  • 2016年5月:
    • 紙器・段ボール箱:原材料・副資材ともに高値のまま推移している。小ロットでの受注が多いため生産コスト等経費の増大を招き、業者が次々に廃業に追い込まれる状態。各社とも現在新しい販路を求めて営業活動に余念がないが、新規開拓は時期的に厳しい状況にある。
    • 印刷:円高の進行もあり、前年度同時期に比べると材料費の中の用紙代はやや 低下傾向にあるが、業況は良いとも言えず、各社ともに収益回復に至っていない。 
  • 2016年6月:
    • 紙器・段ボール箱:引き続き、原材料、副資材価格の高止まりや人件費の増大、少子高齢化による後継者不足が課題となっている。
    • 印刷:競争の激化により、利幅は縮小傾向にあり収益面はやや厳しさを増している。
  • 2016年7月:
    • 紙器・段ボール箱:紙器業界は、原発事故以来、依然として風評被害が続いている。景気低迷等から消費者のマインドが大きく低下し、我々小規模事業者に大きな影響を与えている。これから取引先に対しても今まで以上に優れた情報を整理し、新製品の開発を図っていく。 
    • 印刷:復興需要も落ち着いてきており、各社とも売上状況は芳しくないようで ある。今後も低迷が続きそうな見通しである。
  • 2016年8月:
    • 紙器・段ボール箱:消費者の嗜好が多様化、専門化する昨今において、市場ニーズは変化している。小ロット多品種化、新製品開発や販促プロモーションの差別化等、市場ニーズの多層化が進んでいる状況にある。
    • 印刷:例年、8 月は他の月に比べて稼働状況、売上とも低調な月であるが、今 年の夏の景況は特に厳しく感じられた。 
  • 2016年9月:
    • 紙器・段ボール箱:総体的に見て、紙器需要が伸びているという実感がない。福島県にも大勢の観光客が訪れているもののお土産品分野も伸長していない気がする。特に5月の連休明けから 7 月にかけて仕事量が減少している。紙器の中でも貼箱については少量ながら堅調な反面、印刷紙器については減少傾向を払拭できない。今年の中元期では紙器各社も忙しいところと、そうでないところとの格差が大きくなり 2 極化の傾向を否めない。 
    • 印刷:各社とも 8 月に比べ、売上はやや好転しているが、秋口の需要期の力強 さは感じられない。 


上記の景況レポートから、印刷業界注目のパッケージ市場を含む両市場とも1月から一貫して厳しい状況にあることが分かります。そして、厳しい市場環境の理由として以下のような課題が挙げられています:
  • 材料費の高止まり・人件費の増大などのコストに関わる課題
  • 需要の弱さや風評被害、市場の変化といった需要面の課題
  • 利益率低下・後継者不足など経営上の課題
中には「風評被害」といった特有の課題もありますが、多くは全国の印刷会社・後加工会社に共通するものです。もしかしたら、全国の印刷・後加工業界を元気にするヒントが福島県にあるのかもしれません。引き続き、福島県の印刷・後加工の景況に注目していきたいと思います。

2016年12月5日月曜日

「世界でひとつ」を注文する:バッグ、シューズ編

Webから自分の好きな「世界にひとつ」のものを注文できるサービスが広まっています。例えば、以下のような「世界にひとつ」のバッグや財布、手帳、シューズなどを自分でアレンジして注文できるサービスがあります:

  • ルイ・ヴィトン モン・モノグラム
    • モノグラム・ラインのバッグや財布、小物に好みの色でストライプとイニシャルを施し、自分らしくカスタマイズすることができるサービス。
    • 納期:8週間以内
  • アディダス MI ADIDAS(マイアディダス):
    • 「スニーカーを自分の好きなカラーでアレンジしたい」「目標を刻んだスパイクでプレーしたい」誰もが一度は思ったことのある、そんな願いを叶えるシューズカスタマイズサービス。
    • 納期:4週間程度
  • ナイキ NIKEiD
    • お気に入りのシューズやバッグをカラーデザインし、カスタムメイドのプロダクトを作ることができるサービス。
    • 店頭でスタッフのアドバイスを受けながらカスタマイズできる「NIKEiD STUDIO」も原宿・吉祥寺・大阪・福岡などにあり。
    • 納期:3〜5週間

こうしたフルカスタマイズできるサービスも良いですが、ロゴマークや写真、イラスト、言葉などを印刷するだけでも「世界にひとつ」を作ることができます。例えば、私事で恐縮ですが、今年の誕生日にSIGGのトラベラーボトルに写真とメッセージを印刷したものをいただきました。まさに「世界にひとつ」のボトルで、とてもうれしくて外出の際にはいつも持ち歩いています。

実はこのボトル、ハイデルベルグ社(ドイツ)の最新インクジェット式デジタル印刷機 Ominifire 250 で印刷されたものです。この印刷機は、さまざまな素材にフルカラーで印刷できることに加えて、曲面にもキレイに印刷できます。例えば、この動画のようにサッカーボールに直接印刷することもできます。この技術を使えば、飛行機(!)に印刷することも可能だそうです。

「自社製品を『世界でひとつ』にカスタマイズできるサービス」や「特別なノベルティグッズがつくれるサービス」を提供されたいメーカーの皆さん、こんな方法もあります。サービスをご検討される際には、お気軽にお声がけください (^ ^)

2016年12月2日金曜日

第0回 ブライター・レイター・ナイト(12月21日)のお知らせ

ブライター・レイターは、印刷会社の経営層向け月次セミナー『ブライター・レイター・ナイト』(Brighter Later Nite)を 20171月からスタートします。『ブライター・レイター・ナイト』では、以下4つのキーワードを軸に印刷会社の成長事業づくりを後押しします:
  • ファンの育成
  • データの収集・活用
  • 既存事業強化
  • 新しいチャレンジ

来年
1月の本格スタートの前に、第0回として「2016年の印刷市場を振り返り、2020年に向けてスタートダッシュする」を以下のように20161221日(水)に開催します。2020年に向けて成長事業づくりを進めている印刷会社経営層の皆さま、ぜひご参加ください:

【第0回 ブライター・レイター・ナイト 概要】
  • テーマ:2016年の印刷市場を振り返り、2020年に向けてスタートダッシュする
  • 日 時:20161221日(水)19時〜2045
  • 会 場:株式会社グッドクロス 会議室(東京・品川区)
  • 対 象:印刷会社の経営層
  • 定 員:10
  • 料 金:3,000円(税込)
  • お申し込み:ブライター・レイター(担当:山下)までご連絡ください:
    • お支払いは当日お願いします。領収書も発行します。 

なお、20171月以降は以下のように毎月1回定期的に『ブライター・レイター・ナイト』を開催する予定です。奮ってご参加ください:
  • テーマ:ブログなどを通じてその都度ご案内します。
  • 日 時:毎月第3水曜日 19時〜2045
  • 会 場:株式会社グッドクロス 会議室(東京・品川区):
    • JR山手線 五反田駅(西口) 徒歩5分/ 東急池上線 大崎広小路駅 徒歩3分
  • 対 象:印刷会社の経営層
  • 定 員:各回10
  • 料 金:各回3,000円(税込)

【ブライター・レイターについて】
ブライター・レイターは、印刷・加工/マーケティング/IT/インターナショナルの4つの強みを活かして、『コミュニケーションが生まれ、広がり、深まる、デジタル時代の印刷物』の企画・活用や、印刷会社の成長事業づくりを支援するサービスを提供しています。