印刷物をもっと「つくる」「使う」「残す」ことを支援する、ブライター・レイターのブログです。

2017年1月3日火曜日

ロックな印刷物:14 Hour Technicolor Dream Poster

今から50年前の1967年の夏は "Summer of Love" と呼ばれ、ロックにとって特別な季節でした。ビートルズは「愛こそはすべて(All You Need is Love)」を歌い、ローリング・ストーンズは(iMacのCMにも使われた)「She's a Rainbow」を発表しました。スウィンギング・ロンドン(Swinging London)は、サンフランシスコと並んでその中心でした。

1967年4月29日〜30日にロンドンで開催された "14 Hour Technicolor Dream" も、愛に満ちた夏を彩るイベントのひとつでした。シド・バレット在籍時のピンク・フロイドやオノヨーコ、ソフト・マシーンなどが演奏し、ジョン・レノンやジミ・ヘンドリックスも来場しました。

そのポスターも、とてもロックなものです。シルクスクリーンで印刷されたサイケデリックなポスターは、色使いやグラデーションの出方がすべて異なっています。そもそも、シルクスクリーンでグラデーションを出しているポスターは、おそらくこれが世界で最初のものです。

数年前「ユリシーズ」という音楽雑誌のためにこのポスターをデザイン・製作したマイク・マキナニー氏にインタビューしました。マキナニー氏によれば、このポスターは1,000枚くらい印刷されましたが、同じものは存在しません。ただ、意識的に異なるようにしていたというよりも、「ドラッグをキメながら刷っていたから、同じようにできる訳ないよね(笑)」とのことでした。

印刷は、全く同じものを大量に複製することを得意としています。しかし、バリエーションをつくることで、時代の空気を取り込んだりデザイナーの実験的な試みを表現したりすることもできます。しかも、その際には必ずしもデジタルの力を借りる必要はありません。印刷にはまだまだたくさんの可能性があります (^ ^)

ところで、さまざまな 14 Hour Technicolor Dream のポスターを集めて比べると楽しそうなのですが、2017年時点で残っているものはほとんどありません・・・マキナニー氏も、「テムズ川が溢れたことがあって、手元にあったポスターはその時すべてテムズ川に流されたんだよ」ととても残念そうにおっしゃっていました。ただ、Summer of Love 50周年の今年は、このポスターも含む展覧会がいろいろと開催されそうな気もします。機会をみつけて、このステキなポスターをぜひ見てみてください!