印刷会社の新規ビジネス成功支援を専門とするコンサルティング会社 ブライター・レイター のブログです。

2017年1月20日金曜日

ロックな印刷物:John Lennon Psychedelic Poster by Richard Avedon

1960年代後半はポスターの魅力が大きく高まった時期です。このサイケデリックなジョン・レノンのポスターもこの時期に印刷・販売されました。アメリカのファッション写真家リチャード・アヴェドンが1967年8月に撮影した写真が使われたこのポスターは、アメリカだけで25万枚以上売れ、その成功を受けてヨーロッパや日本でも販売されました。

このポスターはサイケデリックな色でプリントされた写真をもとに作られていますが、その写真はもともと白黒フィルムで撮影されていました。では、パソコンもない時代にどうやって白黒フィルムからカラフルな紙焼きを作ったのでしょう?

アヴェドンはまず使う写真を選び、その写真の白黒ポジフィルムを作りました。続いて、その白黒ポジフィルムとカラーフイルターなどを組み合わせてカラーポジフィルムを作りました。この段階では、白黒写真をカラーフィルター越しに見ているような状態です。普通のカラー写真とは異なる面白い効果が出ていますが、まだまだサイケデリックさが足りません(笑)。

次に、アヴェドンはカラーポジフィルムのソラリゼーションを行いました。露光の際には、さまざまな色の光を使って実験しました。また、メガネの部分にも白黒とカラー2枚のネガを少しズラして重ねる(版ズレが起こったような状態)という工夫をしています。この段階でかなりサイケデリック度は高まっています。

最後に、ダイトランスファーという手法で紙焼きを作りました。その際、サイケデリックな効果をさらに高めるために、ラボのプリント担当者は特別につくった染料を開発・使用しました。アヴェドンという稀代の写真家と優秀なラボの職人が本気で創った写真をもとにしたポスターが、素晴らしくない訳はありません。

ところで、このポスターはアメリカ・イギリス・ドイツ・オーストリア・スイス・日本で販売されました。国ごとにサイズもまちまちだったりしますし、また当時は大きなポスターを大量に輸出したり輸入したりするのも大変だったでしょうから、各国で印刷されたと考えられます。その場合、それぞれのポスターごとに違った味わいがありそうです。ぜひ一度、各国版を一堂に集めてそれぞれの味をじっくり楽しんでみたいものです (^ ^)


2017年1月16日月曜日

株価と印刷市場の関係は?

皆さんもご存知の通り、2016年11月以降株価は大きく伸び、そのトレンドは今年の年初まで続いていました。では、こうした株式市場の活況は印刷市場にどのような影響を与えるのでしょうか。

これを分析するために、2002年〜2014年における以下データの推移を比較したグラフを作成しました(グラフを見やすくするために、2002年を100として指数化しています):


グラフを見ると、この間日経平均は大きく上下していることが分かります。2006年末には2002年末の2倍になりましたが、2008年末・2011年末には2002年末時点の水準にまで落ち込みました。その後、2012年以降は再び大きく伸び、2014年末には2006年末とほぼ同じ水準になっています。

これに対して、印刷市場はほぼ一本調子で縮小しており、2014年は2002年のおよそ7割の規模となっています。つまり、中長期的に見ると、株価と印刷市場規模には相関関係は無さそうです。もちろん、仕事の内容によっては株価との相関性が高い印刷会社もあるでしょう。また、年末時点ではなく年間平均株価を算出してより詳細に分析すれば、もう少し相関が高まるかもしれません。しかし、全体として見た場合には、相関性は低そうです。

売上・利益の増大を目指す印刷会社には、株価の変動に振り回されることなく、2017年も成長事業をつくる取り組みを希望と勇気を持って着実に進めることが必要不可欠です。デジタル時代の印刷物・印刷サービスを企画・提供して、楽しくて明るく前向きな2017年にしましょう!

2017年1月11日水曜日

ロックな印刷物:"Velvet Underground & Nico" アルバムジャケット

1960年代、アメリカでポップアートが大きく花開きました。その中心人物の一人だったアンディ・ウォーホルはこの時期に、「キャンベル・スープ」「マリリン」「エルヴィス」「フラワーズ」といった代表作を描き、「チェルシー・ガールズ」「エンパイア」「スクリーンテスト」といった映画も製作しました。

ウォーホルはまた、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューアルバム「Velvet Underground & Nico」(1967年)のプロデュースも手掛けました。このアルバムジャケットには、ウォーホルのシルクスクリーン作品「バナナ」とウォーホルの名前スタンプが使われています。

最初に製作されたバージョンではこのバナナはシールになっていて(ちなみに、印刷はシルクスクリーン方式)、貼ったりはがしたりできます。そしてバナナシールをはがすと、その下からはピンク色の新鮮な果肉が現れる仕掛けになっています。しかし、すぐにこのシール式ジャケットは直接バナナを印刷する方式(つまり、シールではないタイプ)に変更されました。

ところで、このバナナシールを使ったジャケットを製作するにあたり、特別な機械が開発されたと言われています。一方、人が手作業で貼っていったという説もあります。私は「手作業説」支持派です。当時の技術では、そこまでの精度を持った加工機を開発するのは難しいと考えられるからです。むしろ、手作業の方が早くて精確にできるかと。

また、もし開発に成功していれば、費用回収のために引き続きさまざまなシール式ジャケットが製作されていても良さそうです。しかし残念なことに、こんな仕様のアルバムは当時他にはなさそうです。加工機の写真や情報も残っていないようですし。

さらに、このアルバムジャケットはゲートフォールド式だったりもします。シールが使われていることもあわせて、ロックバンドのデビューアルバムとしては異例に豪華な仕様です。異例といえば、表(おもて)面にバンド名やアルバムタイトル名の表記がない点もそうです(それらは裏表紙(雑誌的にいうと表4)に書かれています)。

デザイン優先のこのアルバムは、ジャケットの生産コストが嵩んだり、当初の売上がレコード会社の期待に届かなかったりと、短期的には(商業的には)成功しませんでした。ちなみに、発売日(1967年3月12日)から1969年2月14日の約2年間に売れた枚数は58,476枚でした。

ただ、長期的は極めて大きな成功を収めています。この「熟れすぎて一部が黒ずんだバナナ」はヴェルヴェッツのブランディングに重要な役割を果たしています。また、「Velvet Undergound & Nico」は発売以来一度も廃盤になったことがないそうです。もちろん、音楽としての質の高さが主な理由だと思いますが、ジャケットの魅力も無視できません(ロックの世界には「ジャケ買い」という言葉もありますし)。

「Velvet Underground & Nico」の発売50周年となる今年、ジョン・ケイルこのアルバムの全曲を演奏する記念ライブを英国・リバブールで行う計画を発表しています。ゲストを含め、どんなライブになるか楽しみに待ちましょう (^ ^)

2017年1月6日金曜日

drupa2020でデジタル後加工機に期待したいこと

オフセット印刷サービスでは通常、印刷と後加工は別の会社が担当します。しかし、デジタル印刷サービスでは、印刷会社が後加工もあわせて行うケースが大半です。そのため、デジタル印刷サービス向け後加工機は少ない人数でも動かすことができ、かつ職人でなくても品質を保てるよう、自動化・省力化・スキルレス化が進んでいます。

また、デジタル後加工機はデジタル印刷機とセットでの運用が想定されています。drupa2016でも、デジタル印刷機の進化に伴い以下のような動きが見られました:
  • B1サイズ用紙に対応したデジタル後加工機の発表
  • 産業用印刷物向けデジタル後加工機の拡充:
    • 産業用印刷物:パッケージ(紙器・軟包装)、シール、ラベル、など
  • デジタル印刷機との連携性のさらなる向上:
    • 特に、商業印刷市場向けや書籍・雑誌・新聞印刷市場向けなど
    • インライン・ニアラインともに

会場では、以下のような動向も見受けられました:
  • 型・版を使わないデジタル後加工機の増加:
    • レーザーカッター、デジタルニス加工機・箔押し機、など
    • 自動給紙や搬送機能付きで生産性向上も実現
  • 小ロット向け 型・版ありデジタル後加工機の提案:
    • スジ押し加工用
    • 樹脂やプラスチック製スジ押し用テープなどを使ってオンデマンドで型を作成
  • オフセット印刷物にデジタル後加工で加飾するデモ、など

こうしたトレンドを踏まえると、drupa2020では以下のようなデジタル後加工機が期待できそうです:
  • デジタル印刷機の柔軟性に対応できるデジタル後加工機:
    • 特に、パッケージ(紙器・軟包装)など産業用印刷物向け
    • 「型・版なし」「型・版あり」ともに
  • 印刷機の生産性とバランスが取れたデジタル後加工機:
    • 生産性が向上された「型・版なしデジタル後加工機」
  • 印刷機の品質とバランスが取れたデジタル後加工機:
    • UVオフセット印刷機と組み合わせて使える「型・版ありデジタル後加工機」
  • 印刷会社の所有する印刷機や仕事内容に合わせてセミオーダーできるデジタル後加工機、など

私は特に、小ロット対応力の高い「型・版ありデジタル後加工機」の進化に期待しています。印刷の分野では、UVオフセット機といった「小ロット対応力の高い版あり印刷機」が広く使われるようになっています。これと同じことが後加工の分野で起こることは十分に考えられると思いますが、いかがでしょう?

小ロット対応力の高い「型・版ありデジタル後加工機」が登場すれば、柔軟性重視型サービスに加えて品質重視型サービスを実現できることから、印刷会社が提供するサービスの多様性がさらに高まります。そうなれば、過度な価格競争からも脱却しやすくなります。

drupaなど印刷機材展では印刷機の進化に注目しがちですが、drupa2020では後加工機の進化にも注目しましょう!

ところで、添付の写真はdrupa2016のHPブースで紹介されていたSEI Laser社製のデジタル後加工機 PaperOne です。搬送機能付きのレーザーカッターで、プラスチック製テープ(英国 Man Mat社製)を使ったオンデマンドスジ押し機能も付いています。写真は、このスジ押し用の型を取り付けているところです(黄色い部分がスジ押し用プラスチック製テープです)。

2017年1月3日火曜日

ロックな印刷物:14 Hour Technicolor Dream Poster

今から50年前の1967年の夏は "Summer of Love" と呼ばれ、ロックにとって特別な季節でした。ビートルズは「愛こそはすべて(All You Need is Love)」を歌い、ローリング・ストーンズは(iMacのCMにも使われた)「She's a Rainbow」を発表しました。スウィンギング・ロンドン(Swinging London)は、サンフランシスコと並んでその中心でした。

1967年4月29日〜30日にロンドンで開催された "14 Hour Technicolor Dream" も、愛に満ちた夏を彩るイベントのひとつでした。シド・バレット在籍時のピンク・フロイドやオノヨーコ、ソフト・マシーンなどが演奏し、ジョン・レノンやジミ・ヘンドリックスも来場しました。

そのポスターも、とてもロックなものです。シルクスクリーンで印刷されたサイケデリックなポスターは、色使いやグラデーションの出方がすべて異なっています。そもそも、シルクスクリーンでグラデーションを出しているポスターは、おそらくこれが世界で最初のものです。

数年前「ユリシーズ」という音楽雑誌のためにこのポスターをデザイン・製作したマイク・マキナニー氏にインタビューしました。マキナニー氏によれば、このポスターは1,000枚くらい印刷されましたが、同じものは存在しません。ただ、意識的に異なるようにしていたというよりも、「ドラッグをキメながら刷っていたから、同じようにできる訳ないよね(笑)」とのことでした。

印刷は、全く同じものを大量に複製することを得意としています。しかし、バリエーションをつくることで、時代の空気を取り込んだりデザイナーの実験的な試みを表現したりすることもできます。しかも、その際には必ずしもデジタルの力を借りる必要はありません。印刷にはまだまだたくさんの可能性があります (^ ^)

ところで、さまざまな 14 Hour Technicolor Dream のポスターを集めて比べると楽しそうなのですが、2017年時点で残っているものはほとんどありません・・・マキナニー氏も、「テムズ川が溢れたことがあって、手元にあったポスターはその時すべてテムズ川に流されたんだよ」ととても残念そうにおっしゃっていました。ただ、Summer of Love 50周年の今年は、このポスターも含む展覧会がいろいろと開催されそうな気もします。機会をみつけて、このステキなポスターをぜひ見てみてください!

2016年12月30日金曜日

スマート工場はdrupa2020でどう進化するのか?

drupa2016では、データをもとに自分で考える「スマート工場」も話題のひとつでした。自動化・省力化・スキルレス化が進んだ機材を組み合わせて各生産工程を最大限効率化し、さらにクラウドのデータをもとに工場全体の最適化を行う。そんな「夢の工場」がさまざまなブースで紹介されていました。

では、次回drupa(2020年開催)では、このスマート工場はどのように進化するのでしょうか。もちろん、さらなる生産工程の効率化は進むでしょう。ただ、それ以上の進化も十分に期待できます。

例えば、『紙媒体の適切な使い方を提案できる工場』への進化。印刷会社内には、クリエイティブや使用した用紙、コストなど、すでに生産した印刷物に関するさまざまなデータが蓄積されています。これらに顧客が持つ印刷物を活用したキャンペーンの成果など効果に関するデータを組み合わせることで、紙媒体の適切な使い方を予測・提案できるさらにスマートな工場に進化させることができます。この工場では、2016年のキーワードのひとつであるAI(人工知能)がフル活用されるでしょう。

あるいは、『職人と AI がお互いに刺激しあう工場』への進化。私は、AIは必ずしも職人を置き換えるものではないと考えています。むしろ、職人に刺激を与え、その技にさらに磨きをかけるための弟子のような役割を果たすことを期待しています。同時に、AIにとっても職人は精度を高めるための師匠となるでしょう。drupaでは、そんなスターウォーズのような(笑)職人とAIがお互いに刺激しあうスマートな工場の提案があるかもしれません。

『他社事例から学習できる工場』への進化も十分に考えられます。工場をさらにスマートにする方法のひとつに、他の印刷・加工会社のデータを活用することがあります。学習用データは多ければ多いほど、その効果は高くなりますから。また、他社データを活用することで、例えば自社設備の稼働ランキングもわかるようになるといったメリットもあります。ただ、お互いの工場訪問や協業に熱心な印刷業界ですから、もしかしたら、こうした他社事例から学習できるスマートな工場はdrupa前に登場するかもしれません。

他にも自社の『営業戦略を提案できる工場』『設備投資計画をアドバイスできる工場』『物流を最適化できる工場』『適切なセキュリティレベルを管理できる工場』など、さらなるスマート化の方向性としてさまざまなものが考えられます。drupaでは、どんな方向性への進化が提案されるのでしょう?今からとても楽しみです (^ ^)

2016年12月28日水曜日

B0/ VLF枚葉インクジェット機はdrupa2020に出展されるか?

印刷業界の2016年を振り返る時、ドイツ・デュッセルドルフで開催された世界最大の国際印刷機材展 drupa2016に触れない訳にはいきません。とはいえ、drupa2016の内容を改めて紹介するのもナンですので、世界で1番早く次回drupaを予測するブライター・レイターらしく(笑)drupa2016を踏まえつつdrupa2020のトレンドを予測します。

さて、drupa2016の華はB1サイズ枚葉インクジェット式デジタル印刷機でした。Landa社と小森コーポレーション、富士フイルムとハイデルベルグ、ゼロックスとKBAといった、デジタル印刷機・オフセット印刷機のメーカーがそれぞれの強みを持ち寄って共同開発した機種は、非常に高い生産性・印刷品質・用紙対応性などを実現し、オフセット印刷機の一部の仕事を置き換えることも視野に入れています。

drupaの歴史を振り返ると、drupa2008・drupa2012ではB2枚葉インクジェット機が大きな話題でした。そして、drupa2016ではB1枚葉インクジェット機が注目の的でした。では、次回drupa2020(2020年開催)では B0(B倍)やVLF(Very Large Format)の枚葉インクジェット機が出展され、同じように大きな話題になるのでしょうか?

私は、十分に可能性はあると考えています。ただ、それは以下のような特徴を備えた印刷会社をターゲットにしたかなり尖った機種になりそうです:

  • 『B1枚葉インクジェット機 x スマート工場』という仕組みを武器に、小ロット/マスカスタマイゼーション(一品大量生産)向け紙器パッケージ印刷の仕事を十分に開拓できている(あるいは、開拓の目処がついている)印刷会社
  • ギャンギング(複数ジョブの多面つけ)のノウハウも武器である印刷会社
  • 自社が必要なスペックを機材メーカーに示すことができる印刷会社、など

こんなに尖った機種だと「drupa会場で紹介しなくても良いのでは」という声も出てきそうです。しかし、私はこういう尖った機種こそ、drupa会場に展示すべきだと考えます。印刷業界の可能性や気概を業界の内外に示すことができるからです。

この年末年始は、drupa2016を振り返りつつdrupa2020の動向を予測する記事を上げていく予定です。大掃除やおせちに飽きたら、ぜひこのブログを覗いてみてください(笑)!
(写真は drupa2016会場に展示されたB0枚葉UVオフセット機 KBA Rapida 145